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泥水式推進工法の基礎知識

泥水式推進工法の基礎知識

今回は『泥水式推進工法の基礎知識』について解説します。

 泥水式推進工法とは

まず推進工法とは、発進立坑から到達立坑へ、先端に掘進機を取り付けた推進管をジャッキを使用して前進させ、発進立坑と到達立坑の間に管きょを構築する工法です。推進工法は切羽が開放状態になっているかどうかで開放型と密閉型に分類され、さらに密閉型は主に、泥水式・土圧式・泥濃式に分類されます。今回は、泥水式推進工法について詳しく解説していきます。

 

泥水式推進工法は、掘進機のカッタチャンバ内に泥水を満たし、その泥水の圧力で切羽の安定を保持しながら掘削・推進する工法です。掘削した土砂は泥水とともに坑外の泥水処理機に送られ、土砂と泥水に分離し、戻り泥水は再び切羽に送られ、土砂はダンプで運び出されます。

 泥水式推進工法の長所と短所

 刃口式との比較

長所 ・切羽の安定確実性が高いので、適応範囲が広い。
・滑材の注入は、機内への流入がなく確実に行える。
・機械掘削で推進速度が速いため、工期が短く済む。
・切羽が密閉されていて、作業の安定性が高い。
・掘削土が流体輸送されるため、坑内運搬等の危険作業が少なく、作業環境が良い。
短所
・機械費および仮設備費が高い。
・切羽の状態を目視で判断できない。
・排土処理コストがかかる。

 土圧式・泥濃式との比較

長所 ・地下水圧が高い、地下水圧の変化が激しい、透水性の高い土質等、厳しい地下水条件においても、切羽の安定を保持しやすい。
・掘削、排土が循環回路としてシステム化しており、遠隔集中操作が可能。掘進中は坑内に人が入る必要がなく、作業員の安全性が確保されている。
・一次処理土は建設発生土として利用可能。
短所
・泥水の粘性や比重が高いと、排出が困難になる。
・泥水処理プラントを設置する用地が必要、またプラントの騒音振動対策が必要。

 

 泥水について

泥水には主に、切羽面の崩壊を防止するための適度な泥膜の形成と、掘削土砂を地上の泥水処理設備まで輸送するという2つの役割があります。

 泥水に必要な性質

上記の役割を果たすために、地山条件に応じた泥水の比重や粘性が求められます。

①適度な比重
切羽の安定を保つうえで必要最低限の比重が望ましく、一般的に1.05~1.30程度で管理します。比重が高いと切羽の安定性は高まりますが、流体輸送ポンプの負荷の増大、排泥管の閉塞や泥水処理に困難が生じます。比重の測定には、マッドバランスを使用します。(右記写真)
 

<マッドバランス>

②適当な粘性
粘性は一般的にファンネル粘度計(右記写真)で計測します。シルト層で25~30秒、砂層で30~40秒、砂礫層で35~50秒とされています。粘性が大きいと掘削土砂の沈殿防止や泥水の逸泥防止になりますが、流体輸送のポンプの抵抗が増大し、泥水の一次処理で砂との分離が困難になります。

<ファンネル粘度計>

 泥水材料(基本配合)

粉末粘土・ベントナイト・増粘剤(CMC等)・水を基本材料として作泥しています。

 泥水管理

安定した品質を保持するとともに、土質や掘進中の変化に対応するために常に泥水管理を行います。泥水は掘削に伴い品質が低下するので、常に泥水を計測して測定値が所定の管理基準から外れたときは、必要に応じてベントナイト、粘土、増粘剤等を添加するか、清水を加え泥水を希釈して品質を保ちます。

管理する項目は主に以下の通りです。現場では、主に粘性と比重管理を行います。

  • 比重
  • 粘性
  • ろ水量
  • 砂分濃度
  • pH

 

 泥水処理

掘削した土砂は泥水とともに坑外の泥水処理機に送られ、土砂と泥水に分離し、戻り泥水は再び切羽に送られ、土砂はダンプで運び出されます。

 一次処理

一次処理とは、切羽より輸送されてきた戻り泥水から礫分、砂分および75μm以上の粘土分やシルト塊を機械的に分級・分別することです。一般的に機械式の振動ふるいとサイクロンの組み合わせが多く用いられています。一次処理設備で分離した泥水は、比重や粘性等を調整されたあと、切羽に再循環されます。また、一次処理土は建設発生土として、再利用が可能です。

 二次処理

二次処理とは、余剰泥水の粘性と比重を所定の品質に維持するために、泥水中の微細粒子の分離を行うことです。通常は泥水に凝集剤としてPAC(ポリ塩化アルミニウム)を混入し、フィルタプレスにて加圧脱水処理する方法が用いられています。二次処理土は産業廃棄物となります。

 

 滑材について

推進工法では、掘進機が掘り進むとともに後続の推進管も地中を移動します。推進管全体の移動に伴う推進管外周の地山の緩みの抑制、推進管と地山の摩擦低減のために推進管外周に滑材を注入します。

<滑材注入平面図(イメージ)>

 滑材の種類

一体型混合滑材

工場出荷時にあらかじめ配合された粉体または液体の滑材、定められた清水で混練りするだけなので、作業性がよいです。

粒状型滑材

高吸水性ポリマーを主成分とした滑材です。滑材としての性能品質は最も信頼できる材料ですが、耐久性に乏しいため、長時間かかる推進では中間部から追加注入する必要があります。

固結型滑材

二液混合タイプで、混合後およそ30~60秒以内にゲル状態になる滑材です。可塑剤とも呼ばれます。透水性の高い砂礫層によく使用されます。

遅硬性滑材

推進時は滑材、推進終了後は固化して裏込め材として機能する滑材です。これまで裏込め注入ができなかった小口径管推進工法や、大中口径における裏込め注入作業の省略など工期短縮、コストダウンができる滑材として使用されることがあります。しかし、何らかの推進トラブルにより滑材の有効期間を超過すると、滑材が硬化して推進不能になる場合があるため使用にあたっては十分な検討が必要です。

 滑材の注入量

掘進機の掘削断面積から推進管外径面積を差し引いた量を注入します。
※推進延長が250m以上の場合、滑材の劣化による推進力の上昇を抑えるため、滑材を補足注入する必要があります。

 

 裏込め材について

すべての推進が終了した後、管体周囲に裏込め注入を行い、管と地山の空隙を充填し、地山の緩みの防止および推進管の継手部の止水性を確実にします。注入は、推進管の注入孔から行います。

 裏込め材に必要な性質

裏込め材には、流動性と地下水に希釈されないことが求められます。管体周囲に均質な裏込め層を形成するために、裏込め材・注入位置の選定、注入の順序、1か所当たりの注入量や注入圧力等を適切に管理する必要があります。

 裏込め材の注入量

滑材と同量を注入します。

 

以上、今回は泥水式推進工法の基礎知識についてご紹介しました。

 

参考文献)
「推進工法体系Ⅰ推進工法技術編2007年版」(公社)日本下水道管渠推進技術協会(2007年4月)
「推進工法体系Ⅱ計画設計・施工管理・基礎知識編2007年版」(公社)日本下水道管渠推進技術協会(2007年4月)
「月間推進技術Vol.27 №6」(公社)日本推進技術協会(2013年6月)
「月間推進技術Vol.30 №4」(公社)日本推進技術協会(2016年4月)

 

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