今回は、推進工事現場からいただいた泥水や滑材に関するご相談事例とその対策方法をご紹介します。
目次
急な地山の変化(粘性土→砂、礫)により、すぐに泥水の粘性が必要
通常、泥水の粘性を高めるためには、CMCやベントナイトが使用されています。しかし、これらには以下のような課題があります。
・ 粘性が上がるまでに時間がかかる
・ ダマ(ママコ)になりやすい
・ 使用量が多い
このため、急な地山の変化には瞬時に対応することが困難です。
そこで、このような場合には「ホレール」の使用をおすすめします。「ホレール」は溶けやすく、ダマ(ママコ)になりにくく、短時間で粘性をあげることができます。また、使用量が少量で済むため、作泥作業が楽になります。
地山の粘土分がマシン面盤に付着して取り込みが悪い
粘土分の付着を防ぐために、これまでさまざまな対策が試みられてきました。
しかし、十分な効果が得られず、マシン面盤が閉塞してしまうケースも少なくありませんでした。
そこでこのような場合は、「粘土付着防止剤」をおすすめします。
「粘土付着防止剤」は、マシン面盤や粘土分の表面に高分子の薄い保護膜を形成するので、表面はなめらかになり、付着を抑えることが可能となります。
現在70mまで施工中だが推進力が上昇しているため、推進力を抑えたい
管 径:φ2800mm
推進延長:L370m
土 質:帯水砂層
工 法:泥水式推進工法
使用滑材:一般滑材
滑材は水道水で作液した場合には良好な性能を発揮しましたが、現場の地下水では滑材性能がほとんど得られないという問題が発生しました。
そこで、現場の地下水特性に適合するように滑材を調整・切り替えた結果、推進力は低下し、無事に到達することができました。(到達時周面抵抗:1.58kN/㎡)
現場土質・地下水にあった滑材を選定・使用することが重要です。
滑材を水道水で作液しているが、効果が発揮されず推進力が上昇している
滑材を水道水で作液した場合、所定の粘性は問題なく得られます。しかし、注入後のテールボイド内では地下水の影響を必ず受けるため、注意が必要です。この地下水に特定のイオンが含まれていると、粘性の低下が起こります。その結果、滑材本来の効果は発揮されず、推進力が上昇していると考えられます。このようなトラブルを防ぐためには、事前に地下水の水質調査を実施し、その水質に適した滑材を選定・使用することが重要です。
なお、特定のイオンを含む地下水は海岸付近に限らず、平野部や山間部でも検出された例が多数あります。現場の立地に関係なく、十分な注意と確認が求められます。
滑材を地下水で作液しているが、粘性があがらない
まさに地下水の影響を受けています。地下水の成分によっては、数日経過すると急激に粘性が低下し、水っぽくなることがあります。どのような滑材でも、作液直後にはある程度の粘性が得られるため、滑材効果が得られると判断しがちです。時間経過による粘性の低下にご注意下さい。
滑材を川の水で作液しているが、ヌメリが得られない
川の水質も様々な人為的影響により汚染されていることがあります。これにより付近一帯の地下水も汚染されている可能性があります。いずれも、事前に水質調査とその水質にあった滑材を選定、使用することをお薦めします。
以上、今回は推進現場での困りごととその対策をご紹介しました。ぜひ参考にしてみてください。