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シールド工法の基礎知識

シールド工法の基礎知識

今回は『シールド工法の基礎知識』について解説します。

 はじめに

新幹線・高速道路・通信網など、生活を支えるインフラ整備に欠かせないのがトンネル工事です。道路や鉄道だけでなく、下水道や地下街、大雨時の一時的な貯水池、さらにはLPGや石油の備蓄基地といった特殊な施設も、トンネルによって作られています。
トンネル工法は、以下の通り大きく4つに分類され、その1つにシールド工法があります。
トンネル工法  山岳工法  NATM
 TBM
 シールド工法  開放型  泥水
 密閉型  泥土圧
 開削工法
 沈埋工法

山岳工法

標準的なトンネル工法であり、地山を掘削機械などで掘っていき、地山の持っている強度と支保工で安定を保ちながら掘り進める工法です。岩盤層からなる山岳トンネルで採用されます。

シールド工法

シールド工法は、シールドマシンと呼ばれる円筒状で鋼鉄製の掘削機械で崩れやすい地山を支えながら、掘り進める工法です。シールドマシンの先端にあるビットと呼ばれる“歯”のついた円盤状の板(カッターヘッド)を回転させ掘り進みます。その後方では、セグメントと呼ばれる鋼製または鉄筋コンクリート製の部材でトンネル壁を構築していきます。粘土・砂・礫など比較的軟らかい地盤の都市部のトンネルで採用されます。
【シールド工法の施工順序】
①ジャッキをセグメントに押し当てて、掘進
②ジャッキを縮めて、セグメントを組み立てる

開削工法

開削工法は、地上から掘り進め、構造物を埋設または構築して埋め戻す工法です。地上から掘り進むため、比較的浅い部分で採用されます。

沈埋工法

海や川の底に溝を作り、地上であらかじめ制作したコンクリートの箱を沈めて上部を埋め戻す工法です。

 シールド工法の特長

1.地上への影響が少ない
  ・地下で作業するため、地表の交通や建物への影響が少ない
  ・交通量の多い場所でも施工可能
2.安全性が高い
  ・土圧、水圧をコントロールしながら掘削するための地盤崩壊のリスクが低い
3.高精度な施工が可能
  ・方向修正が精密に行えるため、設計通りのルートで施工可能
  ・曲線対応可能
4.様々な地盤に対応
  ・粘土、砂、砂礫、岩盤など多様な地質に対応したマシンがある
  ・地下水の多い地盤で適用可能
5.騒音、振動が少ない
  ・地下での作業となるため地上へ騒音や振動の影響が少ない

 シールド工法の分類

シールド工法は、シールド機前面の形式の違いにより開放型密閉型に分類され、さらに密閉型は前面の圧力保持形式の違いにより、泥水式泥土圧式分類されます。

泥水式シールド

掘進機のチャンバー内に泥水を満たし、カッターで削った土砂と混ぜると同時に、片方をセグメントに、もう片方を隔壁にあてたジャッキによってチャンバー内に圧力をかけて、切羽の安定を保持しながら掘削していく工法です。掘削した土砂は泥水とともに坑外の泥水処理機に送られ、土砂と泥水に分離し、戻り泥水は再び切羽に送られ、土砂はダンプで運び出されます。

泥土圧式シールド

掘進機のチャンバー内に掘削土砂に粘性を高めるための加泥材を送り込み、カッターで削った土砂と混ぜると同時に、片方をセグメントに、もう片方を隔壁にあてたジャッキによってチャンバー内に圧力をかけて、切羽の安定を保持しながら掘削していく工法です。掘削した土砂は、スクリューコンベアで排土量を調整しながら、ベルトコンベア・トロバケット・圧送ポンプなどにより坑外へ排出されます。

 泥水式と泥土圧式の比較

泥水式 泥土圧式
掘削土砂への添加物 泥水 加泥材
地上への搬出方法 排泥管を通して地上まで流体輸送 スクリューコンベアからベルトコンベアを介してトロバケットなどで搬出
長所
・地下水圧が高い、地下水圧の変化が激しい、透水性の高い土質等、厳しい地下水条件においても、切羽の安定を保持しやすい ・大規模な泥水処理設備を必要とせず、比較的狭い作業基地で施工可能
・一次処理土は建設発生土として利用可能
短所
・泥水の粘性や比重が高いと、排出が困難になる ・掘削土砂に加泥材が入っているため、残土の再利用不可
・泥水処理プラントを設置する用地が必要、またプラントの騒音振動対策が必要
以上、今回はシールド工法の基礎知識についてご紹介しました。

 

参考文献)
堀江博 著「陥没事故はなぜ起きたのか 外かく環状道路陥没の検証」 株式会社高文研(2023年1月)
大成建設「トンネル」研究プロジェクトチーム 著「最新!トンネル工法の“なぜ”を科学する」 株式会社アーク出版(2014年1月)

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